ただこの欲望に
不実になれないだけ
継母が家中に
いくら鍵を掛けても
なめらかに素足は
夜を駆け抜ける
潤んでく躰が
行き場のない波で
鈍ってしまう前に
少女のように患い
娼婦のように誘う
恋という幻戯の一滴を
まずは口に含み
そっと
呑み込んでみればいい
ただこの快感に
味を占めただけなの
ほろ苦くて甘い
それはほんの一瞬
厳かな腐敗に
舌が溶ける間の
熟成が進めば
もう戴けないわ
愛となり黴を持つ
貴族のように憂いて
下賤のように嗤って
魂に身分与えたら
人間(ひと)は誰でもみな平等
そう思ってみるわ
でもこの感情は
差別するためにある
愚かしいあなたを
殺して差し上げたい
せめて貫くのは
恍惚の槍で
生きることはすべて
悦びと知るほど
その先を見てみたい
ただこの欲望に
不実になれないだけ
神様が手首に
いくら鎖巻いても
私は最後まで
光に背くわ
美しく盲いる
暗い柩のなか
責め苦に耐える為に
快楽に酔い
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